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sinso

ブランドの精神を増幅させる装置としての空間

布団をはじめとした寝装具の販売・リース及び、クリーニング・メンテナンスサービスを提供するブランド『SINSO』のクリーニング工場兼オフィスの計画。田園地域に建つ、築40年の工場をリノベーションした。 
 かつて寝具は100年もつもので、「打ち直し」をしながら代々受け継がれるものだった。しかし現在、粗大ゴミで一番多いのは布団という調査結果もあり、東京都だけでも年間東京ドーム290個に敷き詰めることのできる布団が廃棄されている。

SINSOはメンテナンスも行うことで、長く使える寝装具を扱うサスティナブルブランドである。設備的にも、オゾンの生成装置を導入しオゾン水で洗浄することで、使用する洗剤の量を最小限にし、環境への負担を軽減させている。
 さらに、SINSOの製品は洗いざらしが特徴である。環境に悪影響を及ぼさないよう糊を使用せず、 肌馴染みの良い綿本来の素材感を大切にしている。

ブランドと呼応する空間デザイン

製品の特徴である「洗いざらし」が持つ素材本来の美しさ、そして環境負荷低減への取り組みを空間で表現することを目指し、「素」という空間コンセプトを導き出した。
デザインにおいては、最小限の手法で素材の魅力を最大限に引き出すことを心掛けた。既存の躯体や仕上げを極力活かしながら、新たに加える素材は塗装やクロス張りを施さず、そのままの状態を見せた。
特に、オフィスエリアではこの「素」のコンセプトが象徴的に表現されている。劣化した断熱材を吹き直し、飛散防止のためにポリカーボネートで覆うことで、通常は隠される断熱材を意匠として見せた。 昼間はポリカーボネートが外光を室内に拡散させ、夜には断熱材の質感が浮かび上がる。これは、余計な装飾を排し、機能を持つ素材そのものをデザインとして昇華させる、「素」のデザイン思想の具現化である。

閉じていない工場

また、一般的に工場は中が見えず、近隣住民にとってネガティブな物になってしまう事が多い。そこで、奥まで見通すことできるレイアウトとした。手前から、ラウンジ、オフィス、作業場、保管場所と異なる機能をシースルーに並べ、それを貫通するように電設資材を組み合わせたライン照明を吊る事で、視線を奥まで引き込んだ。SINSOの取り込みが可視化され、オープンな工場として地域に溶け込みつつ、避けてはならない環境への意識を発信できる場となることを願っている。

Program:クリーニング工場兼オフィス
Location:山梨県南都留郡富士河口湖町小立2198-2
Structure:鉄骨造
Scale:459.50㎡
Construction:SUMITSUBOYA DESIGN WORKS
Photo:中山 保寛

https://sin-so.com